
大学院、みなさんどんなイメージがありますか?
小難しい研究をしているイメージ?
はたまた、大学生活のモラトリアムなイメージ?
このページでは栄養学の修士課程を専攻する大学院生スズヤマの実例を紹介します。
栄養学はいわゆる「理系」に属しますので、理系の大学院進学を考えている方の参考になればと思います。
文系の大学院はまた事情が違ってくるようなので、友人の話をふまえて、少し触れようと思います。
ざっくりいうと
ざっくりいうと、大学院とは大学よりも更に専門的に勉強し、上位の学位をもらえるところです。
また、授業を受ける機会よりも、自分で研究する機会が多いところです。
何年間通う?修士課程・博士課程とは?
何年大学院には修士課程と博士課程があります。
大学よりも修士課程のほうがより専門的で、修士課程より更に専門的なのが博士課程です。
通学年数は例外もありますが、一般的には
修士は大学卒業後2年間の課程
博士は大学卒業後5年間の課程
であることが多いです。
修士課程は博士前期課程と呼ばれる場合もあり、その場合は、
博士前期は大学卒業後2年間の課程
博士後期は博士前期課程終業後3年間の課程
となっていると思います。
要は、修士(博士前期)課程は2年間、博士課程は博士前期課程も含めて計5年間大学院に通う必要があります。
通常、四年制大学を卒業すると、『学士』という学位が付与されますが、大学院では『修士』、『博士』などの学位が付与されます。
研究開発や大学教員を目指す際は、この学位が非常に重視されます。
研究室(ゼミ)選びが何より大事
将来、研究の道に進みたいし、大学院に進学しよう!
そう思った方は、研究室(ゼミ)選びが、ヘタをしたら学校選びよりも重要になってきます。
研究室によりルールが違う
大学院生は学校で過ごす大体の時間を、所属する研究室で過ごします。
実験するのも、論文書くのも、教授に何かを教わるのも全部所属する研究室です。
学部生でも4年次になると、研究室配属が決まり、そんな感じで過ごしている人も多いと思うので、イメージしやすいと思います。
ホワイト企業、ブラック企業なんて言いますが、研究室にもホワイトとブラックは存在します…!
教授の言うこと絶対順守!の研究室もあれば、教授は熱心でなく研究指導をしてくれない…なんて研究室もあり。
教授も学生も超夜型で夜に行くのが当たり前の研究室もあれば、8時17時のコアタイム厳守で、少しでも遅刻したら施錠されてはいれない!なんて研究室もあります。
本当に、研究室によって研究内容も生活リズムも変わってきます。
研究室によっては就職に有利・不利も
また、コネというほどではありませんが、所属する研究室によって就職活動に有利不利が生まれます。
まずは研究室の分野です。
例えば『有機化学』の研究をする研究室では、食品だけでなく機械、薬品など、有機化学に関連する企業への就職の道があります。一方、『給食管理』の研究をする研究室では、有機合成の現場への就職は難しいですが、管理栄養士として働く需要があります。
もう一つに教授や研究室のパワー、いわゆるコネがあります。
教授だって人間です。自分の元で一生懸命研究した学生には自分の信頼できる会社で働いてほしいという気持ちや、自分が関わっている会社に送りこめると後々やりやすいぞというこずるい想いがあります。
そして企業側も利益は大事です。この研究室の研究は興味深い、この教授とのコネクションは大事にしたい、となった時に、その研究室の学生が受けにきたらまぁ有りがたいですよね。
あとは、企業の人が大学の研究室で教員や学生と一緒に研究する共同研究というものがあります。
そこで一緒に研究したことがある学生が受けて来たら、人となりが分かっている分採用・不採用の判断がしやすいです。
選択する研究室によって、将来の道も変わってきますので慎重に選択してください。
大学院ってどんなことをするの?
ほとんど研究
ほとんどの時間、研究して過ごします。
研究室に所属すると、研究テーマが与えられます(自分で決める研究室もあるよ!)
で、それについてひたすら調べて、実験で検証して、何かしら発表するというのが研究の流れです。
授業も少しだけあります
ほんのすこーしですが、授業とる必要があります。
といっても、学部生の頃のように課題が大量に出されて、テストも難しくってという授業は減るので、それほどウエイトはありません。
大学院も決められた単位を修めなくては卒業できません。
ゼミ・セミナー
研究室によりますが週に1回程度ゼミ・研究室セミナーが開かれます。
研究って普段はソロプレイです。
誰かと一緒にやる研究ももちろんありますが、基本は自分で計画を立てて、必要な論文を読んで、実験を行います。
なので、メンバーの状況把握のためにゼミという名の進捗報告会が定期的に開かれます。
抱き合わせで、読んだ論文を紹介する、なんてことも行います(論文紹介)。
学会発表
日頃の研究成果発表の場です。
学会で発表したり、そこで賞をもらったりすると研究業績となります。
ポスター発表という、研究内容をまとめたものを紙にして貼り出す発表方法と、
口述発表という、パワーポイントなどを使って人前で話す発表方法があります。
成果として大きいのはやはり口述発表です。
卒業論文発表をイメージしてもらうとわかりやすいと思います。
論文
学会発表も成果になりますが、研究者の業績の一番の指標は論文です。
論文を何報アクセプトされたか、というのが大事です。
(※アクセプト:学術雑誌なんかに採用されること=認められること)
ただ論文を書くだけでなく、論文の内容を認めてもらうことが大事です。
それも認めてくれるところはできるだけしっかりしたところがいいです。
有名な雑誌だとネイチャーなどがありますね。
その専門分野で有名な学術雑誌がありますので、そこに論文を投稿してアクセプト(採用)されるということが、研究者のひとまずの目標となってきます。
修士では自分がメインの論文投稿まで求められない場合もありますが、博士を目指す場合は必須事項になってきます。
大学院生のタイムスケジュール
例として栄養学科院生スズヤマの理想的なある一日を紹介します~!
7:00 起床
9:00 登校・メールチェック等雑務
10:00 実験開始
12:00 昼食
13:00 実験再開
16:00 実験終了、実験ノート作成
17:00 帰宅
18:00 アルバイト開始
23:00 アルバイト終了
25:00 就寝
・・・うん、理想的!
意外とがっつり研究室にこもりっきりなんですよ。
同期も大概同じような拘束時間で動いていました。
※実験に問題が起こると昼食の時間が削られたり、後ろに押したりします。
※アルバイトがなければ、エンドレスで実験することがあります。
私はアルバイトの時間もあったので、極力昼間のうちに実験を終わらせるよう努力していましたが、スペースが広くて、機械も確保しやすいから夜に研究したいという人も一定数いました。
あとは実験によっては、12時間ごとの測定が必要なものがあったり…
そうすると、朝9時に来て測定、夕方一度帰ってお風呂まで入って夜21時にまた来て測定。なんてことをやっている同期もいました。
生き物相手だったりすると、土日も餌やりや水やりにくる必要もありますし、意外と大学院生ってハードワークです。
学費・その他必要費用
1年あたりの学費は、学部生時代と大きく変わりません。
ただ、内部進学でも入学金は改めてかかってきますので、ご注意ください。
アルバイトってできるの?
アルバイトはできますが、やっている人は少数派でした。
研究に集中しようと思うと、どうしてもアルバイトはいれづらいんですよね。
ただ研究室にもよりますが、大学院生は自分の裁量にまかされる部分が大きいです。
今日はアルバイトだから研究を時間通り終わるように組み立てて~なんてこともできるので、やろうと思えばできる環境です。
私はがっつり居酒屋さんで働いていましたが、家庭教師等、拘束時間は短いが時給がよいものをやっている人が多かったです。
内部進学の場合、学部生時代から続けているアルバイトだと、色々と融通してくれるのでやりやすかったりします。
学部卒と就職先が違うの?
研究職に関して言えば、大学院卒のほうが圧倒的に有利です。
その他は大きくは違わないように感じます。
研究職は、そもそも修士以上しか受けられない企業が多いので、研究職に就きたいなら修士進学は検討すべきです。
他の職種に関しては、若いほうが有利な場合もあれば、院卒でも学部卒でも能力があればよいってところが多い気がします。
ただ院卒のほうが学部卒よりも、研究や学会発表の場数を踏んでいる分、面接などで有利に立ちまわれることが多い気がしますし、企業側も理系職種や学会に出られるような管理栄養士を求める場合は、院卒のほうが有利になる場合もあります。
研究職を目指す場合は大学院進学をおすすめしますが、それ以外の業種を目指す場合は、今後どのようなキャリアを積んでいきたいかも意識する必要があります。
大学院進学すれば道が広がるのではなく、方向性が変わるだけだと思っておいてください。
大学院に進学してみたものの、やっぱり理系仕事は嫌だから事務職に就きたい!となると「なんで大学院まで出て事務なの?」という質問が待ち受けます。
2年間という時間が無駄にならないように、進路を決めてください。
文系の大学院ってどんなところで理系と違うの?
主に、企業からの印象が違ってくるようです。
実際、やっていることは同じような感じですが、文系の友人の話を聞いていると、理系よりも更に裁量が大きいように感じました。
具体的に言うと、学校にほとんどいかなくてよい感じ。
うらやまし~!
理系は毎日研究室に通って実験するのがほぼ義務です。
だってそこにしか実験器具ないので。
でも文系は、学外でフィールドワークをやって、家で論文を書いて、ゼミの時だけ学校に行くが許されるらしい…!
いや、ゼミによっても違うんだろうけど!
確かに、実験器具にとらわれなければ、あえて学校に行く必要もないのかもしれません。
大きな違いは、実験するか否かですね。
で、肝心の企業からの評価。
理系院生は、実験技術、知見、発表スキルが学部生よりも秀でている場合が多く、企業でも同じようなことをしてほしくて雇うわけです。
研究に品質管理、商品開発など活かすべき職種があって採用しています。
一方文系院生は、同じように各専門の知識や発表スキルがあるわけですが、それを直接活かせる企業が少ないのが現状です。
文系の就職先って営業だったり、経理だったり、事務だったり色々ありますけれど、フィールドワークが必須!という仕事はなかなか少ないですもんね。
そうなってくると、あえてコストも年齢も高い院卒を採用するより、若い学部卒がいいなとなってしまうんです。
なので、文系の大学院に進む場合は、その先のキャリアもしっかり考えた上で進学すべきです。
あっ、理系も同様です!ただなんとなく進学してしまうと、技術もつかず、でも年齢だけ重ねてしまうという事態になってしまいます。
大学院進学は、モラトリアムを楽しむためでも、就活の逃げ道でもありません。
いや、それもアリですが、結局大学院修了時にまたぶちあたっちゃうので。
現実逃避にしても、20代の2年間はとっても大きいです。
キャリアを考えたうえでの進学が必要です。
まとめ
大学院進学は一長一短です。
お金もかかれば時間もかかる。
でも修士卒という学歴が得られ、より専門的なフィールドで働くことが可能になります。
20代の2年間ってとても大きいです。
特に女性の場合はどうしても結婚・出産にも響いてきます。
貴重な2年間をどのように活用するか、今後のキャリアを踏まえてよく考えた上で、進路を決めてください。