
フードファディズムに関する記事をTwitterで見つけて読みました。
食品メーカー勤務者としての視点から書かれた記事はとても興味深かったです。

私もフードファディズムには思うところがあったので、管理栄養士としての視点から少し考えてみました。
フードファディズムとは
ざっくりいうと、食品等を極端に評価することです。
「〇〇を食べるとインフルエンザにならない」
「△△は身体によくない」
等、科学的な証明の有無は関係なく、盛り上げられたりすることが多いです。
食品や栄養に限らず、こういうことはよくあり、メディアの紹介の仕方が意図的にそうなっていたり、SNS等で情報の一部だけが紹介されて、「都合のいい部分だけが独り歩きする」ということも最近では目立つ気がします。
管理栄養士の視点から考える
フードファディズムは管理栄養士として関わることも多く、情報番組等で何か食品が紹介されると翌日にはその食品について聞かれたりします。
でも、番組の伝え方が意図的に偏っていたりすることもあるのですが、たいてい都合のよい情報だけが頭に残っており、「この食品だけを食べていると、〇〇になるんでしょ?」となってしまっていることが多々あります。
確かに、「この食品に含まれている●●という成分には、〇〇な効果があることが分かった」と紹介されていたのかもしれませんが、実際に〇〇の効果を得るためには、●●を10mg摂取しなくてはいけなくて、その●●10mgを摂取するためには、この食品を1kg食べなくてはいけないなんてことも。
情報の一部分だけを信じすぎてしまうのは、とてもリスキーなことだと思います。
〇〇ダイエット
よくある例として〇〇だけを食べれば痩せられるという「〇〇ダイエット」。
トマトだけを食べ続ける、夜ごはんは納豆だけにする等、色々なものが毎年のように紹介されている気がします。
最近の極端な低炭水化物ダイエットもこの一部だと感じています。
管理栄養士目線から言うと、何か一つだけを食べて、例え痩せることができてもそれは一時的なものだったり、身体に負担をかけるものなのでお勧めしません。
急な食環境の変化は身体への負担が大きいですし、長続きはしませんので、リバウンド等につながりやすいです。
若い人はそれでも身体が頑張ってくれて、負担を感じずダイエットしてしまうかもしれませんが、感じていないだけで身体には負荷がかかっています。
将来の自分のためにも、目先だけの減量は避けて、長い目で見て生活習慣改善を心がけてみてください。
結局それが一番の近道だと思います。
あと、太るってすごくエネルギーのいることです。
それが「〇〇だけで簡単に痩せる!」って結構こわいことだって思って欲しいです。
低炭水化物には色々な意見があると思いますし、まだまだ研究が始まったばかりの分野なので科学的蓄積がなく、各学会などでもまだ指針が定まっていない部分です。
ですが、極端なものは確実に身体に負担をかけます。
確かに日本人は炭水化物過多な人も多いので、人によっては少量の炭水化物制限は必要な場合はあると思います。
ただ、個人的には極端なものは危険なものだと思っていますので、ご注意ください。
偏った食事にいいことなしバランスのとれた食事
結局、バランスのとれた食事が一番だと思います。
そうはいっても、そんなの作ってられないよ!楽して痩せたいよ!
という人もいるかもしれませんが、そんな簡単に痩せられるってほんと怖いことだと思ってください。
わかります、私だって楽して痩せたい。
でも、その考え方がまず太る元です。
栄養学を勉強していて体感することが多いのですが、やっぱり身体って食べたものでできています。
若いうちは、多少の不摂生も若いパワーでなんとかしてくれているんですが、年齢を重ねると如実に感じます。
楽したい気持ちもわかりますが、結局は日々の積み重ねです。
どんなに身体に良いと言われる食品でも食べすぎれば毒です。
水だって塩だって脂肪だって身体には無くてはならないものですが、摂りすぎればマイナスに働きます。
身体に良いと言われる食品だって同様で、同じものばかりの食生活は身体への負担につながります。
健康も減量も一日にしてならず
「バランスの良い食事」、「適度な運動」、もう聞き飽きたかもしれませんが、管理栄養士は本気でそれが健康への一番の近道だと思っているから、何回でも言うんです。
それができないから、できるところの「〇〇ダイエット」からやってるんだよ!って方は、もう少し管理栄養士とお話をしてみてください。
きっと、できるところからの具体的な提案をしてくれると思います。
食品メーカー勤務者視点から考える
実は、食品メーカーでの勤務経験があります。
「メーカー側からすると、売れることって良いことじゃない?」と思うかもしれませんが、個人的にはそうは思いませんでした。
「売れる」ことは確かに良いことなんですが、この場合、あくまで一時的な売り上げ増加にしかつながりません。
数週間するとあっという間にいつもどおりに戻るんです。
ブログ記事等の「バズる」と同様のことが起こっていると思ってください。
これって、売上の恩恵以上に、その間食品メーカーでは大変なことが起こっています。
愛用者に届けられなくなる
安売り等で一時的に売れる、CMを増やしたので一時的に売れる。
これらは、メーカー側で予想が立つことなので、一時的に増産して対応したりします。
しかし、メーカー側で意図しておらず起こったバズには、メーカー側はすぐに対応することができません。
需要にこたえられず、一時的な売り切れや品薄状態が続きます。
そうすると普段その商品を愛用してくださっている方に商品がいきわたらなくなります。
バスでの一見さんも新しい顧客になってくれる大切な人ですが、いつも購買してくださっている方はメーカーが商品を作る上でとても大切な人たちです。
その人たちに供給ができなくなるというのは、とても大きな問題です。
ブームはすぐ去るのに増産しなくてはいけない
こういうブームやバズはわりとすぐに去ってしまいます。
でも、品薄や売り切れを解消するためには会社として無理をしたって増産しなくてはいけません。
商品は様々なもので出来上がっています。
原材料となる食品、カップやフィルムなどの包装材料、調味料などなど...
全てを自社で確保しているわけでなく、野菜はこの農家さん、カップはA社、フィルムはB社、醤油はC社等様々な会社が関わっています。
それら会社にも緊急で増産してもらわなければならず、場合によっては通常以上に費用がかかることがあります。
また、どのくらいブームがもつかもわからず、大量の在庫を抱えるリスクを背負い、増産に踏み切らなくてはなりません。
従業員への負荷が大きい
増産によって様々なリスクや負担を背負いますが、一番大きいの従業員への負担です。
従業員はすぐに増やすことができないため、今までと同じ人数で大量の商品を作り出さなくてはなりません。
工場の稼働率をあげなくてはいけませんし、残業も増えます。
新しい人を増やして教育する時間はありませんので、今いる従業員が頼りです。
しかし、残業続きは従業員の満足度を下げますし、どうしたってミスも起こりやすくなります。
従業員は会社にとって最も大切なものです。
学生時代、飲食店でアルバイトをしていたことがあったのですが、テレビの取材依頼がいくつもきましたが店長は決して受けませんでした。
「テレビが来てくれるなんていいことなのになんでだろう?」と思い、聞いてみたことがありました。
「一時的にお客さんが増えても、それで常連さんになってくれる人はほんの一握り。そのために、一定期間従業員に大変な思いをさせる方がマイナスだから、うちのお店は取材は受けない。」と言っていました。
本当にその通りだなと思います。
一時の利益より、従業員の働く環境を一定に保つことが、長い目で見て大切なことだと教わりました。
まとめ
メディアは様々な情報を発信します。
意図的かどうかは置いておいても、視聴者は偏った知識を得ることがあります。
私たちに必要なことは、情報をただ受け取るだけでなく、精査していくことだと思います。
発信される情報の一部だけをうのみにするのでなく、自分で答えを選んでいけるようにしていかなくてはならないと感じました。