
食品メーカーで活躍したくて栄養学を学んでいる・学びたいと思っている方はたくさんいます。
その中でもやはり花形は商品開発職!
栄養学部だけでなく、薬学部や農学部などからも押し寄せる人気職です。
そんな商品開発職ですが、『商品をつくる』ということはわかりますが、具体的にどんな仕事をするでしょうか?
このページでは食品メーカーの商品開発職の仕事や就職について説明します。
ざっくりいうと
ざっくりいうと、商品開発職は商品をつくるコーディネーターです。
何もないところから新しいものつくる時に必要なのが商品開発職。
しかし、商品がお客さんの手に渡るまで、食品メーカーでは非常に多くの仕事があり、新しいものを作るときには他部署の協力が不可欠です。
そのため、商品開発職は商品づくりに必要な部署を全てつなげるという役割があります。
商品が店頭に並ぶまでに必要な仕事とは?
商品が店頭に並ぶまでには、非常に多くの工程があり、たくさんの職種の人が関わっています。
会社にもよりますが、多くは以下のようなフローで作られます。
①マーケティング→②企画→③原料調達、④試作、⑤保存試験(賞味期限設定)、⑥包材選定、⑦パッケージデザイン作成→⑧テスト生産→⑨本生産
①マーケティング
市場調査です。
企業は利益を追求するものです。好きなものやなんとなくよさそうなものを作るのでは売り方も戦略も決まりません。
そのため、まずは市場調査を行い、何を開発していくかを決めます。
例えば、クッキー製造会社が新しい商品を開発しようとしています。
市場調査の結果、チョコレートコーティングしたものが10代で流行っていることが分かりましたが、苺チョコレートコーティングクッキーは競合他社はまだ販売していないことがわかりました。
需要があり、供給が追い付いていないものとして『苺チョココーティングをしたクッキー』という商品像が見えてきます。
ここまでがマーケティングです。
マーケティングは、コンビニやスーパーなどの購入者情報を調べたり、営業さんから「こういう商品を店舗は欲しがっている」といったことが情報源になってきたりします。
②企画
企画は、マーケティングを経て、あたらしい商品の形をはっきりさせていく仕事です。
どこで、誰が、どういった目的で購入するか、購入者(ターゲット)像をはっきりさせることで、より売れる商品を目指します。
先ほどのクッキー会社の例ですと、
10代、甘いお菓子を比較的食べ、流行りのものに敏感な層が商品のターゲットになってきます。
おやつに少量食べきれるサイズ感にして、コンビニで気軽に買えるように…などなど、どんなお客さんに売りたいかを考えていくと、自然と商品の味やサイズ、積極的に販売したい場所がみえてきます。
③原料調達
商品をつくる原料を決めるのも大事な仕事です。
野菜の品種が違ったり、小麦粉の種類が違ったりすると、できてくる商品の味・サイズは大きく変わってきます。
同じお砂糖でできたものでも、上白糖か液糖かで、味も調味料の混ぜやすさも変わってくるため、お客さんだけでなく、工場も大問題です。
なんの原料を使用するか、原価を計算するのも、商品開発に関わる仕事です。
クッキー会社の例ですと、薄力粉だったり、バターだったりを検討します。
特に苺チョコレートは新規の原材料ですので、調達先決めから、工場での保管条件や取り扱い方まで決めていく必要があります。
④試作
試作はみなさんがイメージする商品開発の主要業務だと思います。
実際、開発にとっては『味』という一番大切な部分を担う仕事です。
目指す味・見た目・コスト・賞味期限を作りだすために、何度も何度も試作を重ね、食べて評価をします。
たった1種類の材料の種類を変えたり、重量を変えたりするだけで、味も変わりますし、コストも大きく変化します。
クッキー会社の例の場合、ひたすらに苺コーティングクッキーをつくり、味や見た目を確認していきます。
クッキーたくさん食べられて幸せ!と思うかもしれませんが、同じものを食べ続けて、味を比較していくってなかなかに大変なことです。
あと、お腹がたまってしまうと味覚は鈍くなるので最小限しか食べず、味わって吐き出すことが多いです。
栄養学部では「お残しは許しまへんで」の世界なので最初は慣れないと思いますが、食べてしまうと正しく判断できないので悲しいですが、しょうがないです。
⑤保存試験(賞味期限設定)
できあがった商品の保存試験を行うことにより、賞味期限を設定します。
商品にもよりますが、pHなどの理化学検査をしたり、菌数を測定したり、実際に食べてみて風味を確かめたりですね。
栄養学科で勉強した実験がこのあたりで活きてきます。
色々な結果を加味して、「ここまでは美味しく安全に食べられる!」という日数を設定し、更にその日数に0.8を掛けたものが賞味期限になります。
例として、製造後20日間、理化学検査や菌数検査、風味も問題なかったクッキーがあったとして、このクッキーの賞味期限は製造後16日までとなります。
⑥包材選定
どんな包装材料で包装するかを決めます。
購入する側からすると、外見と言えばパッケージデザインですが、どんな素材の包材で包むかは、賞味期限や商品の見た目に関するとても重要な部分です。
食品は光や温度によって劣化スピードが変わります。
特に最近はやりの「天然着色料」を使った商品は、光による退色が激しいので、透明なパッケージだとどうしても賞味期限に影響してきます。
逆にアルミニウムなどの光を遮断する包材を選べば、賞味期限は伸びますが、食品の見た目を直に見せることができなくなり、包材の原価も高くなります。
売りたい商品やコンセプトによって包材を選択することが大切です。
⑦パッケージデザイン作成
包材が決まったら、あとは買いたくなる見た目にするためにパッケージデザインです。
ここまでの商品開発は、特に中小企業なんかですと、「商品開発職」の人が全部を担当したりします。
ですが、パッケージデザインだけは、会社に専門のデザイナーがいたり、外部のデザイナーさんと相談して決めるという会社が多いように思います。
他のところは社会人になってからの勉強で補えても、デザインは素人がすぐにできるようになることではありませんもんね。
商品開発としてやるべきことは、デザイナーさんにコンセプトやターゲットをしっかり伝えること。
お年寄りに売りたい商品に、若者向けなスタイリッシュなパッケージでは何か違いますからね。
⑧テスト生産
中身と外見が完成したら、いよいよ工場で作ります!
・・・の前に。
これまでの試作等は、試作品が数十キロできてしまっても処理に困るため、工場で実際につくるよりもかなり少ないロットで行ってきました。
小ロットでは問題がなくてもロットを大きくすれば出てくる問題もあることは、栄養学を学んでいる人は覚えがあると思います。家庭の調理と給食現場の調理は別物ですもんね。
そのために、まずは予備試験!ということで、工場で新商品をつくってみるのがテスト生産です。
工場の人とコミュニケーションをとりつつ、ロットを大きくしていきます。
⑨本生産
テスト生産が無事に終わったら、いよいよ本生産、店舗への輸送です。
ここでひとまず、商品開発の手を離れます。
あとは、お客さんからのクレーム対応や、定期的に生産に問題がないか工場と連携する必要があります。
商品開発はコーディネーター
いやー改めて書き出してみると商品ができるまでにやること、たくさんありますね!
じゃあ、これ全部商品開発職が行うの?と言えば、そうではありません。
パッケージデザインのように、別の職種の人がやる場合もあり、そのあたりは会社によって異なります。
しかし、商品開発職はすべてを把握していなければなりませんし、別の職種の人が協力してくれる場合には、その人にコンセプト、ターゲットをきちんと伝え、一緒に商品をつくっていかなくてはなりません。
商品を作り上げるには、様々な知見を持った人が必要です。
一人ではできません。
ですが、たくさん人がいるということは、それをまとめる人が必要です。
商品開発職には、関わる人すべてをまとめるコーディネーターとしての力が求められます。
どこまでが開発の仕事で、どこまでが他の専門家に任すかは会社により異なります。
大きな会社では、「マーケティング部」、「企画部」、「品質管理部(保存試験)」、「デザイン部」など仕事がわかれていたりしますが、中小企業ですと全部が商品開発職の人にのっかってきたりします。
これから就職する人は、ひとくくりに「商品開発」と思わず、自分がどんなふうに商品開発に携わりたいのか考えてから受けてください。
自社工場を持っていない会社の商品開発職は、どう頑張っても試作以降の工程はできなかったりしますので。
管理栄養士じゃなきゃなれない?
そんなことはありません。
食品の商品開発をするうえで、特に必要な資格はありません。
ただ、どうしても「食品をつくる」という仕事がメインになってきます。そして「食品をつくる」には調理技術もそうですが、何より「実験」をやったことがあるかが大きく関係してきます。
砂糖の量を変えて味を比較したい、適した発酵時間を見つけたい等々、商品開発は実験に通ずるところがあります。
企業もそれがわかっているため、理系学部の採用を積極的に行っています。
その中でも管理栄養士は実験もしたことがあって、調理技術もあるので、最近は商品開発職としての需要が増えましたが、まだまだ少数派。他の学部出身者が圧倒的に多いです。
なので、管理栄養士じゃなければ就職できないと言う事はないですが、不利になるということもないように思います。

大学院卒じゃなきゃだめ?
学部卒でも求人はあるが、大学院卒を必須としている会社もあります。
私も商品開発は修士以上でないと雇ってもらえないイメージがあったため、修士進学を決めましたが、実際にはそんなことはなく、学部卒でも商品開発をしている人はいます。
しかし、前項でもありましたが、商品開発は実験に通ずるところがあり、企業もそういった人を求めます。
そうなってくると、学会など人前での発表経験も豊富で、自分で実験を組み立てる経験もしている修士卒よりも学部卒はどうしてもアピールが難しくなります。
大学院卒でなければなれないわけではありませんが、大学院卒と面接で戦って勝つ必要があることだけ覚えておいてください。
商品開発職に就くにはどうしたらいい?
通常の就職・転職と同じです。
とにかく、求人を見つけて応募あるのみです!
ただ、気を付けてほしいのは職種欄です。
最近は総合職採用する企業が増えてきており、最初から「商品開発」をできる会社は少ないです。
そして、商品開発に携わる人数は少なく、希望しても必ずしも配属されるかはわかりません。
必ず商品開発として働きたいのなら、職種欄を確認して応募する必要があります。
新卒で商品開発職に就職するには?
まずは、求人の出ている食品メーカーを探しましょう!
探し方は通常の就活と同じでリクルートサイトや学校の求人情報を見てみてください。
そして、とにかく履歴書・エントリーシート(ES)を送りまくる…!
食品メーカーは不景気のあおりを受けにくいということで人気があります。その中でも商品開発は人気所!
会ってもらわないと始まらないので、とにかくES通過を目指してください!
あとは通常の就活と同じです。とにかく倍率が高く、敵が他学部だということを覚えて面接に挑んでください。
ちなみに学校にくる求人は面接まで行けることが多くておすすめです。もともと、その学校の学生が欲しくて求人を出している企業なので、会ってくれる率が高いです。
転職で商品開発職に就くには?
転職の場合も、通常の転職活動と同じで、エージェントやハローワークを使って食品メーカーを探します。
転職の場合は、圧倒的に経験者採用が多いです。3年以上の経験がある方は、比較的転職先はある気がします。
問題は、未経験で商品開発職へ転職刷る場合。
これはかなり狭き門になります。
ですが、ゼロではありません。商品開発の経験がなくとも、「理系学部卒なら可」、「食品メーカー勤務経験があれば可」など、企業ごとに条件は異なります。
最近では第二新卒としてなら未経験可のところも増えてきたので、アンテナを張り巡らし、受けられそうな企業は挑戦してみるのがいいと思います。
転職の場合、とにかく個別に企業にあたってみるしかありません。
エージェントの場合、エージェントが間に入って条件をする合わせて求人を教えてくれるので便利です。
商品開発に最も必要なのはコミュニケーション力
商品開発というと、ずば抜けた味覚や、髙い発想力などが必要なイメージですが、一番大事なのは「コミュニケーション能力」です。
全く別の専門家たちをまとめて、一つの方向を見て、新しい商品をつくっていく仕事です。
どうしてもそこにいざこざや問題はおきます。
普段からコミュニケーションをとり、信頼を勝ち取り、他より頼られる間柄を他部署との間につくっていくことが非常に大切になってきます。
まとめ
いかがでしたか?
華やかな印象の強い商品開発ですが、意外と縁の下の力持ち的な役割も担っています。
いろんなところに頭を下げたり、個性的なメンバーの間に入って大変だったり、なかなかハードな仕事ですが、店頭に並んだ商品を見れば今までのことがふっとぶくらいやりがいのある仕事です。
責任も大きい分、やりがいも大きく、何より自分の作った商品がお客さんの手に渡り食べられているという感動を一番に味わうことのできる仕事です。