
血管は加齢により老化するため、どうしても高齢者では高血圧の有病率は増加します。
高血圧は薬物療法が第一ですが、人によっては食事療法も非常に大切なため、管理栄養士として知っておきたい知識です。
中高年と比較し、高齢者特有の疾患や既往などがあるため、個人個人にあった対応が求められてきます。
そんな高齢者高血圧への栄養指導や、知っておきたいことをまとめました。
ざっくり言うと
ざっくり言うと、基本的には通常の高血圧患者と同様、医師より降圧剤が処方され、そちらが治療の主体となります。
ただ、高血圧症を持つ人は体型や食習慣が乱れていることもあり、必要に応じて管理栄養士がサポートに入ります。
ここまでは通常の高血圧患者と同様ですが、高齢者の場合、特有の疾患によってはこれら治療によって成果がでなかったり、影響を与えてしまう恐れがあります。
高齢者特有の注意点を知っておくことが管理栄養士にも求められてくると思います。
高齢者特有の注意点
家庭と病院での血圧が異なる
若い方でもありますが、家庭内での血圧が正常だけれど病院では高血圧となる白衣高血圧というものがあります。
また、これとは逆に、病院では正常だが、家庭では高血圧を示すということもあります。(仮面高血圧)
正確な血圧を把握することが求められます。
起立性低血圧
起立時に血圧が下がる、いわゆる立ちくらみと呼ばれるような状態です。
高齢者高血圧では高頻度で起こるようで、血圧云々もそうですが、これによる転倒が非常にこわいです。
食後低血圧
食後1〜2時間以内に血圧が下がる病態で、加齢により増加するそうです。
こちらもふらつきや目眩を起こすため、転倒対策のために知っておきたい症状です。
骨折
降圧剤使用開始時、血圧低下が起こることがあります。
血圧の低下により、目眩やふらつきが起こり、転倒の原因となることがあるため、薬の使用し始めは特に注意が必要だそうです。
認知症
高血圧は薬物療法が第一なため、服薬が必要になりますが、認知症患者によっては、服薬管理が難しいことがあります。
適切な服薬のためにも、本人以外の管理が必要な場合があります。
また、現状認知症ではない人でも、多量の残薬が確認できる場合、認知機能障害の可能性を疑うことができます。
フレイル
近年注目されているフレイル(虚弱)、加齢により増加することもあり、高齢者に多くみられます。
フレイルの程度によっては、治療方針が変わってきたりするので、重要なファクターです。
フレイルは介入によって改善することもあるため、管理栄養士としては、フレイル予防や、要支援や要介護への移行を防ぐことが大切になってきます。
栄養指導
基本的には、非高齢者に行うものと同様の指導です。
ただ、前述のような疾病や症状のある人は、必要に応じて個別対応する必要があります。
特に、食後低血圧やフレイルは、管理栄養士の指導により、注意ができたり、改善したりする可能性があります。
画一の指導ではなく、個人個人の生活環境や身体能力、疾病に沿った指導が求められてきます。
減塩
減塩は高齢者に限らず、高血圧に対して有効です。
これは一般的にも知られてきました。
同時に「減塩食は美味しくない」というイメージも先行してしまっているように思いますし、実際に味の濃い食事を長年続けてきた高齢者にとって、いきなり塩分6g/日の食事は「美味しくない」と捉えられてしまうかもしれません。
高齢者の場合、それがきっかけで食欲低下を招き、フレイルや運動レベルの低下を起こしてしまうこともありえます。
減塩は確かに基本ですが、食への意欲が失われないようなフォローが必須になってくると思います。
カリウム摂取
野菜や果物からのカリウム摂取は高齢者でも変わらず降圧に有効ですが、高齢者では慢性腎臓病による高カリウム血症も増加します。
既往と現状に注意して指導する必要があります。
運動
高齢者でも運動療法は降圧治療に有効です。特に肥満をかねている場合、推奨されますが、対象者の運動レベルに合わせた指導が必要となります。
また、心疾患や関節疾患がある場合、運動を行えないこともあるので、他の医療者との連携が必須となります。
運動は激しいものでなく、軽い散歩など、軽度の有酸素運動が推奨されています。
転倒などに十分注意し、対象者の活動レベルを見極める必要があります。
適正体重への減量
高齢者においても、肥満は高血圧だけでなく様々な疾患のリスクファクターとなってきます。
そのため、適正体重の維持はとても大切ですが、減量による筋力低下や活動レベルの低下を招いてしまうリスクもあるため、個別に対応する必要があります。
節酒、禁酒
多量の飲酒は様々な疾患の原因となるだけでなく、高血圧にも影響を与えます。
節酒、活動レベルによっては転倒などを防ぐために禁酒が求められることもあります。
禁煙
喫煙は高血圧のみならず、心疾患の大きなリスクファクターであることが明らかになっているため、高齢者に限らず、全ての年代で求められます。
近年、加熱式タバコならば無害と解釈している人もいますが、喫煙者にとっても、受動喫煙者とってもリスクであることに変わりありません。
まず指導が必要になります。
DASH食
Dietary Approaches to Stop Hypertension食の略で、果物や野菜を豊富に含み、飽和脂肪酸が少ない低脂肪の食事のことです。
アメリカの研究で、他の食事と比較して降圧効果があることがわかっています。
アメリカと日本では食文化が異なるため、そのまま日本に当てはめることは難しいかもしれませんが、豊富な果物や野菜によるカリム摂取も期待できるため、合う人には指導しやすいかもしれません。
ただ、食習慣を大幅に変える必要があるため食欲低下を招いたり、カリウムが多いため慢性腎臓病を併発している人には注意が必要です。
まとめ
高齢者に対する高血圧への栄養指導は、既往や身体レベルの低下もあり、非高齢者のように画一的にはいかないことがあります。
また他のメディカルとのコミュニケーションをしっかりとり、チームとして指導していく必要があります。
しかし、栄養指導は降圧に対して非常に大切なもののため、管理栄養士としてしっかりとした知識を身につけ、他の医療者と一緒に治療に加わっていきましょう。